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保険適用で何が、どう変わるの?体外受精・顕微授精にすすむ人が知っておきたいこと【専門ドクターに教わる妊活・不妊治療】

2022/10/03 公開
2023/06/20 更新

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同じ治療でも、受精のタイミングの見きわめや、培養など、こまかいところまで目配りしてきちんとやっているのかどうか、クリニックの技量を患者さんが判断するのはかなりむずかしいといえます。

これまでの自費治療では、各クリニックがそれぞれの金額設定をしていたという側面もあります。その意味では、一律の保険適用によってクリニックの選択は、これまで以上にむずかしくなってくるといえるかもしれません。

③保険診療で治療を開始すると、得られた受精卵をすべて移植し終えるまでは
保険を使って次の治療周期にすすむことはできません

これまで卵巣機能が悪い人や2人目、3人目にそなえて、複数の胚を事前に凍結したうえで胚移植にすすみたいという希望があると、移植をせずに「貯胚(貯卵)」を行っていたケースがありましたが、保険診療では、これが原則不可能になりました。

保険診療で得られた受精卵(胚)が残っているうちは、胚移植が完了していない状態とみなされ、保険を使って次の治療周期にすすむことができません。

クリニックでは、保険診療と自費診療での費用負担の差と、「貯胚」を行うメリットとのバランスを考えて対応するはずなので、「貯胚」の希望がある人は医師とよく相談しましょう。

なお、保険適用以前(2022年3月31日まで)に凍結した胚がある場合、その胚の移植は保険で受けられます。ただ、ホルモン補充の方法や薬剤などを保険の範囲内で行う必要があるので、これまでとは多少変わる点は出てくるかもしれません。くわしいことは、通院しているクリニックで確認しましょう。

保険適用ではないが、保険と併用できるオプションが「先進医療」です

保険診療と、保険が適用されない自由診療を併用する「混合診療」は、原則として認められていません。そのため、一連のすべての治療は、保険診療の範囲内で行わなくてはなりません。
治療のなかに、ごく一部でも自由診療が入ると、本来なら保険が使える検査や治療でも、さかのぼって全額が自己負担になってしまいます。

ARTでは、基本的な治療以外に、特別な検査や、受精や着床を助けるさまざまな技術が使われることがあります。今回は保険適用にはならなかったけれど「先進医療」として認められたものについては、その部分は全額自費負担になりますが、保険診療との併用ができます。

「先進医療」は、各クリニックが管轄エリアの厚生局に申請して認可されるものなので、クリニックによって、実施している内容は異なります。

もしこれまで体外受精や顕微授精で受けていたオプションの検査や治療がある場合は、それらが通っているクリニックで先進医療として受けられるのかを確認しましょう。

加藤レディスクリニックで行う先進医療(全額自己負担)

タイムラプスインキュベーター
自費負担分 30,000円
温度や酸素濃度などが子宮内と同じような環境に設定された培養器で、受精卵をとり出すことなく、成長の様子を観察することができます。

IMSI
自費負担分 12,000円
超高性能の顕微鏡で精子の頭部を観察して、質のよい精子を選別し、顕微授精する方法。

ERA
自費負担分 140,000円
移植日に子宮内膜が受精卵の着床に適した状態にあるかどうかを調べる検査。

EMMA/ALICE
自費負担分 65,000円
EMMA検査は、子宮内の細菌叢を調べ、ALICE検査は子宮内に慢性子宮内膜炎の原因となる細菌がいるかどうかを調べる検査。
どちらも着床がうまくいかない方に用いられます。

PGT-Aは保険診療が受けられないので医師とよく相談しましょう

今回の保険適用では、胚の染色体の数の異常を調べるPGT-A(着床前胚染色体異数性検査)のような臨床研究や、一部の不育症の検査・治療などが「先進医療」に含まれていません。

したがって、もしPGT-Aや一部の不育症検査を受けると、検査を実施する周期のすべては自費診療になってしまいます。そのため当院でも、それらの臨床研究などからはいったん離れ、保険診療を検討する患者さんが多くいらっしゃいます。

PGT-Aとは、体外受精によって得られた胚の染色体の数を移植前に調べ、問題のない胚だけを移植する方法です。胚盤胞まで成長した段階で、将来胎盤になる部分から5~10個の細胞をとり、検査します。検査する胚盤胞は凍結して、結果を待ちます。染色体異常のないことが確認されれば、その胚を融解して移植します。

日本では検査の有用性を調べるために、臨床研究として実施が認められた施設のみで、必要な条件を満たした方だけが受けられるものです。

その条件は
●反復ART不成功(直近の胚移植で2回以上連続して妊娠できなかった人)
●反復流産(胎嚢確認後に2回以上流産をくり返している人)
(*これ以外にも必要な条件があります)

この検査によって、流産のリスクが減ることが期待されていますが、まだ研究段階で、その有効性の結論は出ていません。

流産をくり返している場合は、PGT-Aにより時間的なロスを避けられる可能性があり、流産の回数や過去の流産で絨毛検査を受け、異数性が確認されている場合などは、積極的に考慮したほうがよいのではと考えています。

(※2022年9月30日現在の情報。今後PGT-Aが「先進医療」に認められる可能性はあります)

保険診療でカバーできる部分は多いので
まずは保険診療内で不妊治療をスタートしてみましょう

今回の保険適用では、基本的に必要な治療はおおむねカバーできています。これまでは、ARTのすべてが自費診療だったため、特殊検査や薬など先進医療外のオプションをたくさんとり入れていたクリニックもありましたが、これまで行っていた治療が、保険によって大幅に制約されたわけではないのです。

ですから、難治性の不妊ではない多くの人は、保険診療内の治療で妊娠できると思われます。これまでARTの治療歴のない人は、まずは保険診療で治療をスタートするのがよいでしょう。

もちろん中には、特別な対応が必要になる方もいます。もし通院しているクリニックから自費診療の提案があったときは、治療のどの部分に自費診療が必要なのかを確認し、医師とよく相談したうえで保険か自費かを選択しましょう。

先にも述べたように保険診療と自費診療は混合することはできないので、診療プランのなかに1つでも自費診療の項目があると、本来は保険適用の項目も、すべてが自費診療となってしまうからです。

夫婦で納得して治療がすすめられるよう、しっかりと検討してみましょう。

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監修
監修

金沢大学医学部卒業。国立金沢病院、国立病院東京災害医療センター、New Hope Fertility Centerを経て、2007年より加藤レディスクリニック勤務。2013年院長に就任。できるだけ自然に近い形での妊娠をめざす「自然・低刺激周期」の体外受精を実践している。日本受精着床学会理事。

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