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不妊治療・妊活のクリニック探し・情報収集ならあかほし 妊活ライフ 妊婦さんの“短鎖脂肪酸”不足は子どもが肥満・アレルギー・ぜん息になりやすくなる?【専門家監修】

妊婦さんの“短鎖脂肪酸”不足は子どもが肥満・アレルギー・ぜん息になりやすくなる?【専門家監修】

妊活ライフ
2024/01/25 公開

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腸活が健康によいことは知られていますが、「妊娠中の腸内環境がおなかの中の赤ちゃんにさまざまな影響を及ぼす」ことを、ご存じでしょうか。なかでも、話題の腸内細菌がつくり出す有機酸の1種“短鎖脂肪酸”が、そのカギを握っているそうです。

そこで今回、腸内環境研究のスペシャリストで慶應義塾大学先端生命科学研究所 特任教授の福田真嗣先生にお話を伺いました。

腸は全身の健康状態を左右する重要な器官

「人間の腸内には約1,000種類、約40兆個の腸内細菌が生息しています。この腸内細菌の集団が、腸内フローラ(腸内細菌叢;ちょうないさいきんそう)。多種多様の腸内細菌が密集している様子が花畑のように見えることから、そう呼ばれています。

腸は食べ物を消化するときに必要なものを吸収し、不要なものを排泄するという働きだけではなく、外界の細菌やウイルスから身体を守る免疫機能があり(腸には免疫細胞の約7割が集まっている)、食物を分解してビタミンなどを合成するといった、たくさんの重要な役割を担っています。

腸内環境を改善することで、内臓脂肪抑制、便通改善のほか、免疫力向上やアレルギー抑制、肌質改善、脳腸相関による精神面への影響など、さまざまな効果が期待されています」

腸内フローラのバランス異常により、例えば 下記のような疾患のリスクが高まります。

腸管関連疾患
大腸がん・炎症性腸疾患

遠隔臓器・全身性疾患
肝臓がん・アレルギー
肥満・糖尿病・動脈硬化
慢性腎臓病・多発性硬化症
自閉症・パーキンソン病

腸内フローラが健康な状態だと、下記の健康維持が期待できます。

健康維持
栄養素供給
腸管感染症予防
アレルギー予防
大腸炎予防

Fukuda et al., Nature 2011; 2013
Fukuda et al., Semin. Immunopathol., 2015
Yamada et al. Mol. Syst Biol., 2012
Yamada et al., Nucleic Acid Res., 2011
提供/メタジェン

腸内細菌が産生する”短鎖脂肪酸”は重要なキーワード

「“短鎖脂肪酸“とは、ビフィズス菌などの腸内細菌が、水溶性食物繊維やオリゴ糖などをエサにしてつくり出す物質のこと。近年の研究で、短鎖脂肪酸には、体脂肪の減少、基礎代謝の向上、内臓脂肪の蓄積予防効果、便秘解消など、太りにくい体質にしてくれるさまざまな働きをはじめとして、免疫機能向上、持久力アップなど健康をサポートする効果もあることが明らかになってきました」と福田先生。

だから、“短鎖脂肪酸”が取り上げられることが増えているのですね。 腸活といえば、以前は善玉菌・悪玉菌など菌そのものに注目が集まっていましたが、腸にある細菌がつくり出す代謝物、特に“大腸に短鎖脂肪酸を増やすこと”が、太りにくい体や健康な体をつくるために大事なようです。


①水溶性食物繊維やオリゴ糖→②腸内細菌のエサになる→③短鎖脂肪酸が作られる

妊娠中に短鎖脂肪酸が足りないと、母体にも子どもにもさまざまな影響が!

胎児は基本的に腸内環境を持たないため、母親の腸内環境が、生まれてくる赤ちゃんに与える影響が大きいそう。

「妊娠中、母体の大腸内に短鎖脂肪酸量が不足していると、おなかの中の赤ちゃんにも影響し、ぜん息のリスクが増加することが動物試験により明らかとなっています。また、胎児における免疫細胞の分化や、神経細胞・腸内分泌細胞・膵臓β細胞の発達が不じゅうぶんになり、結果としてアレルギーや肥満のリスクが増加することが報告されています。これは、母体の腸内環境で産生された短鎖脂肪酸が、腸から吸収されて血中に移行し、胎児を含めて全身に作用するためです。

母体にも影響があり、妊娠高血圧腎症につながります。また、短鎖脂肪酸が腸の内分泌細胞に作用してセロトニンの産生を促し、便を押し出す腸の動きを活性化することで排便をスムーズにする働きがあるため、便秘解消に有効です。そのほかにも、血糖値コントロール、基礎代謝の向上、肥満抑制などの効果もありますから、産後太り対策にもおすすめです」とのこと。

妊娠中の腸活は、母児ともにとても大切なのですね。

短鎖脂肪酸の健康効果として報告されているもの ・肥満抑制 ・免疫賦活化 ・血糖値コントロール ・アレルギー抑制 ・便通改善 ・腸管バリア機能向上 ・持久力向上 ・炎症抑制 ・基礎代謝の向上

※1 Kimura et al., 2013, Nat Commun, 4: 1829. ※2 Chambers et al., 2015, Gut, 64(11): 1744-54. ※3 Furusawa et al., 2013, Nature, 504(7480):446-50. ※4 Chen et al., 2020, Nat Rev Immunol, 20(7):427-441. ※5 De Vadder et al., 2014, Cell. 156(1-2): 84-96. ※6 Luu et al., 2020, Front Immunol, 11:1225. ※7 Makizaki et al., 2019, Biosci Microbiota Food Health, 38(2):49-53.  ※8 Liu et al., 2021, Pharmacol Res, 165:105420. ※9 Morita et al., 2023, Sci Adv, 9(4):eadd2120. ※10 Thorburn et al., 2015, Nat Commun, 6: 7320.  ※11 Smith et al., 2013, Science, 341(6145):569-73. ※12 Kimura, et al., PNAS, 108: 8030, 2011. ※13 Kimura, et al., Nat. Commun., 4: 1829, 2013.

短鎖脂肪酸を増やすには、どんな食事をすればいい?

「短鎖脂肪酸をたくさん産生できる理想的な腸内フローラ(腸内細菌叢)を目指すためには、

①短鎖脂肪酸をつくるビフィズス菌や酪酸産生菌など、さまざまな種類の腸内細菌が腸内にいる状態をつくることと、②それらのエサになる食物繊維が豊富に含まれる食材を継続的に摂取していくことがカギになります。

とくに、チコリやごぼうなどに多く含まれるイヌリンや、バナナなどに多く含まれているフラクトオリゴ糖などの水溶性食物繊維やオリゴ糖が、短鎖脂肪酸の産生に有効です」と福田先生。

短鎖脂肪酸を増やす毎日の食習慣“ビフィズス菌入りヨーグルト100 g+水溶性食物繊維 2g”

ここで、管理栄養士の金丸絵里加さんに、具体的に食べかたを伺いました。

「食事で腸内の短鎖脂肪酸の産生を高めるためには、ビフィズス菌入りヨーグルト+水溶性食物繊維を継続的に摂るのが簡単でおすすめです。ヨーグルトは、たんぱく質やカルシウムを手軽に摂取でき、かつ腸活によい食品として、毎日食べている方も多いと思います。

ただし同じヨーグルトでも「乳酸菌のみ」「乳酸菌+ビフィズス菌入り」といった種類によって、そのメリットは異なります。ビフィズス菌は有用菌の中で優勢かつ中心的な菌で、腸内環境を良好にするためだけでなく、乳酸に加えて短鎖脂肪酸の一つである酢酸を産生することができる、重要な腸内細菌。

『ビフィズス菌入りヨーグルト100g+水溶性食物繊維2g』を毎日摂り続ける習慣をつけると、短鎖脂肪酸が増え、良好な腸内環境を維持できるようになるといわれています」

【グラフ】総短鎖脂肪酸の濃度の差/添加物なし、乳酸菌なし、(ビフィズス菌)GCL2505株+イヌリン の場合の比較

あわせてチェック→短鎖脂肪酸を増やす!とっておきレシピを見てみる

水溶性食物繊維2g摂るには、何をどのくらい食べればいい?

「きのこや豆類などに多く含まれる不溶性食物繊維は比較的摂りやすいですが、水溶性食物繊維は食品に含まれている量がとても少ないため2g摂るのは意外にむずかしいです。

水溶性食物繊維の中で腸内細菌に利用されやすいといわれている“イヌリン”はご存じでしょうか。イヌリンはチコリやごぼうなどに多く含まれています。パウダータイプにした商品のほか、ビフィズス菌とイヌリンの両方が入ったヨーグルトもあります。

まずは、今回紹介する水溶性食物繊維を多く含む、さつまいも・アボカド・りんごなどの食材を覚えて、ビフィズス菌入りヨーグルトと一緒にとり入れる習慣をつけてみましょう」

食材名重量(g)目安量
穀類押し麦(乾)46約大さじ3
オートミール63約2人分
いも類さつまいも222中1本
果物アボカド118約3/4個
キウイ340約1と1/2個
りんご400約1と1/2個
ドライプルーン60約6個
豆類納豆87約2パック
木綿豆腐2000約6丁
野菜ほうれん草280約1と1/2束
ごぼう87約1/2本
にんじん280約1と1/2本
かぼちゃ222約1/4個
ブロッコリー222約1個

出典:日本食品標準成分表(八訂)

 

短鎖脂肪酸を大腸内に増やす食生活が、妊婦さんやママの便秘対策や、太りにくい体づくり、健康対策のため、そして何より赤ちゃんのアレルギー・ぜん息・肥満体質などをふせぐことにつながるとのこと。妊活・妊娠中から積極的に腸活を心がけていきたいですね。

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監修
監修

慶應義塾大学先端生命科学研究所特任教授(農学博士)
世界から注目を集める「腸内環境」の最先端研究を行う。株式会社メタジェン代表取締役社長CEO。明治大学大学院農学研究科を卒業後、理化学研究所基礎科学特別研究員などを経て、現在に至る。複数の論文が世界的な学術雑誌「Nature」に掲載される。腸内環境を適切にデザインすることで病気ゼロ社会を実現するため、2015年に株式会社メタジェン設立。

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