2ページ目(2ページ中) | わが子が卵だった姿を見られるのは体外受精の特権。キラキラの卵を移植して「今、おなかの中にいるんだ」って【100人の妊活・不妊治療記#008】
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わが家を選んでくれた『ボス・ベイビー』。夫婦仲よくを心がけ、待ち続けました
画像ギャラリーちょうど不妊治療が保険適用になる前だったので、金銭的にはもう少し待ったほうが楽でしたが、やはり採卵するなら1歳でも若いほうがいいし、通院回数が増えても今なら職場に近いので通えるからと、総合的に判断しました。実際に、保険適用後はクリニックがさらに混んでしまい、待ち時間も長くなったようなので、自分でもいい判断だったと思います。
採卵は静脈麻酔で行いました。麻酔を入れてすぐ意識がなくなったので、痛みは全く感じませんでした。もともと睡眠が浅いこともあり、採卵後に看護師さんに起こされたときの第一声は「久々によく寝た気がします!」。麻酔で爆睡していたようです。
31個もの卵子がとれて、そのうち13個を体外受精、18個を顕微授精に回し、最終的に10個の受精卵を凍結保存することができました。
採卵は31個。体外受精13個(うち11個受精→6個凍結保存)、顕微授精18個(うち8個受精→4個保存)で、計 10個の受精卵を凍結保存できました
関連記事→受精卵と胚の違いとは?胚のグレードって?
わが子が卵だった姿を見られるのは体外受精ならでは!
移植のときは培養士さんから、戻す卵の状態について説明を受けます。その際に、卵の写真やグレードが載った紙をもらうのですが、受精した胚盤胞がどういう経過をたどって成長し、今どんな状態なのかが一目でわかります。「おはよう、今日はよろしくね」という気持ちで、移植の順番がくるまで、ずっとその紙を眺めていた記憶があります。
それから、移植前は尿を溜めておいてほしいと指示されたのですが、どのくらい溜めるべきなのか、自分の順番があとどのくらいなのかがわからなかったため、初回の移植時は「早くトイレに行きたい」という一心で、呼ばれるのを待っていました。
手術室では先生が、移植する卵の様子を画面に映してくださって、移植中もモニターで確認することができました。先生が終始やさしく「今から戻しますよ〜、キラキラしているのが見えますからね〜」とお声かけしてくださったので、不安はありませんでした。痛みもなく、移植後は「今、おなかの中にいるんだ」と、うれしい気持ちでいっぱいでした。
結局、2回目の移植で子どもを授かることができました。いただいた受精卵の写真は、今でも大切に保管しています。生命の神秘を感じることができて、よい記念になっています。わが子がおなかに来てくれた日が明確にわかること、わが子が卵だったときの姿をいつでも見ることができるのは、体外受精ならでは!だと思っています。
移植前にもらった受精卵の写真。わが子が卵だったときの姿を見るたびに、生命の神秘を感じます
移植日は亡くなった愛犬ユズの誕生日
実は移植の日は、偶然にも、以前飼っていた犬の誕生日でした。
ユズというチワワとプードルのミックス犬で、前年に亡くなっていましたが、移植日を聞いたときはびっくり。何か縁があるんだな、今回はきっとうまくいくと思いました。妊娠がわかったときはユズの生まれ変わりのような気がして、お空に向かって「ありがとう」と言いました。
話しはそれますが、先日買い物に行ったら、ユズとそっくりなワンちゃんに会ったんです。なんだか鳥肌が立つほど似ていて、ずっと私のほうを見ていたのですが、そのとき娘を抱っこしていたので、もしかしたらユズが娘に会いにきてくれたのかも、と思っています。
移植日は亡くなった愛犬、ユズの誕生日で、不思議な縁を感じます。天国のユズが赤ちゃんを授けてくれたのかもしれません
長いトンネルの中にいるようだった
妊活でいちばん大変だったのは、メンタルの維持です。いつ自分が妊娠できるのかわからない状態で、長いトンネルの中にいるような感じがしました。いつか妊娠できる!気にしていない!と言い聞かせても、どこかで焦っている自分がいました。周囲の妊娠報告も、おめでたいことなのに、どこかで「うらやましい」と感じてしまい、100%お祝いする気持ちになれない。そんな自分のことが嫌になった時期もありました。
凹んだときは同じような境遇の方のインスタグラムを見て、気を紛らわせました。映画『ボス・ベイビー』のように、赤ちゃんは空の上から将来のパパママのことを見ていると信じていたので、「あの家に行きたい!」と思ってもらえるように、夫婦仲よく、楽しく過ごすことを心がけたりも。
不妊治療の休暇制度があっても使えない
クリニックの帰りや待ち時間には、日々の感謝と子宝祈願のため、神社でお参りをしていました。水天宮や日光東照宮、靖国神社など、御朱印もずいぶんたまりました。
仕事と妊活の両立にも苦労しました。うちは夫婦とも公務員で、不妊治療のための特別休暇制度はあるのですが、男性が多い職場ということもあって、言い出しづらい…。そもそも有給休暇を年度内に消化しきれていなかったので、通院時にはそれを使っていました。不妊治療のことは公にしていませんでしたが、直属の上司はベテランママさんだったので、何となくわかってくれていたみたいです。
体外受精が始まると、通院日も増え、日程が急に決まるので、休暇をもらうのは気が引けました。休暇は最低限の時間だけ取得し、遅い時間に受診したり、予約を土曜日にしてもらったりしました。
まだ1人目なので何とか乗り切れましたが、これが2人目、3人目ともなると、子どもを保育園に預けながら、私だけ早上がりして病院に行くとか、仕事・妊活・育児と3本立てで、もっともっと大変になると思います。この4月から復職するので、1~2年して生活が落ち着いたころに妊活を再開する予定です。
妊活は、心身ともにつらいこともあります。クリニックで涙を流しながら診察室から出てくるご夫婦を見たこともあります。そのときは、「神様は、なぜ?」とさまざまな感情が湧き出てきて、胸がすごく苦しかった。待合室にいるたくさんの女性や夫婦は、みんな同じほうを向いて、それぞれ進んでいる。そう思うだけで、「自分だけじゃない」と心が救われたこともありました。
私はSNSを通じて、同じ境遇の方たちにたくさん支えられました。私の体験を読んで、少しでも誰かの気持ちが楽になったり、参考になったりすればいいなと思っています。
※あくまで個人の体験です。治療や薬の処方などに関しては必ず医師に相談してください。
取材・文/岩村優子
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