保険適用で何が、どう変わるの?体外受精・顕微授精にすすむ人が知っておきたいこと【専門ドクターに教わる妊活・不妊治療】
不妊治療の保険適用がスタートしました。体外受精や顕微授精など、これまでは全額自費負担だった高額な治療も、3割の負担で受けられるようになり、これを機に、ステップアップを考える人や、新たに治療をすすめる人もふえています。
そこで、体外受精専門の不妊治療施設として、国内でも有数の妊娠率を誇る加藤レディスクリニック院長の加藤恵一先生に、現在の状況や保険診療の注意点などについて、くわしく伺いました。
体外受精・顕微授精を保険診療で受けるときに、気をつけたいこと
タイミング法や人工授精、また生殖補助医療(ART)といわれる体外受精や顕微授精など、有効性や安全性が確認された基本的な治療すべてについて、保険の適用が認められることになりました。
保険適用の基本的な仕組みについて、ここで確認しておきましょう。
①治療開始「年齢」による「回数」の制限があります
生殖補助医療(ART)については、これまでの助成金制度と同様に、治療を開始する時点での女性の年齢によって、制限があります。
●年齢制限
治療計画の作成日時点で43歳未満
●回数制限
40歳未満では通算6回まで (1子ごと)
40歳以上43歳未満では通算3回まで(1子ごと)
回数とは、胚移植を行った回数でカウントされます。採卵しても受精しなかったり、受精卵がうまく育たずに、移植できなかった場合は、回数に含めません。また2022年3月31日までに行った胚移植の回数は含まれません。
つまり、移植可能な受精卵ができるまで、採卵は何度でも保険で受けられることになります。従来の助成金制度では、移植できなくても1回にカウントしていました。移植の回数でのカウントになったことで、その点で採卵の回数のことを心配しなくてよくなったといえます。
初回通院は夫婦同席が原則に
また、ARTの保険適用にあたっては、治療開始時に治療計画の作成が義務づけられていて、採卵から胚移植までの一連の治療を、その計画にしたがって行わなくてはなりません。そのため、初回治療の開始時には原則として夫婦同席が必要です。
②保険適用になると、国内のどのクリニックでも、検査や治療にかかる金額は同一です
それぞれの薬剤や検査、採卵や受精、移植などの医療技術には、保険で点数が定められていて、患者さんが窓口で支払うのはその3割です。
たとえば、まったく同じ種類、同じ量の排卵誘発剤を使い、1個の卵がとれ、体外受精で受精卵ができ、それを移植して妊娠したとすれば、結果として患者さんが支払う治療費は、全国どこのクリニックでもいっしょです。
今回の保険適用では、卵子および胚の個数に応じた傾斜配分*になっているので、卵がたくさんとれ、受精させた結果受精卵が多くでき、それらを凍結すれば、それだけ金額はアップすることになります。
*実績に応じて、それぞれに割りあてられる金額を決めること
保険診療での治療費(3割負担額)
●生殖補助医療管理料
750円または900円(月1回)
●採卵費用
9,600円 (卵子0個の場合を含む)
●受精費用
・体外受精 (ふりかけ法)
12,600円
・顕微授精 (ICSI)
●受精卵培養費用
●胚移植費用
・新鮮胚移植
22,500円
・融解胚移植
36,000円
●胚凍結保存管理費用
・胚凍結保存維持管理料
(2年目以降、年1回) 10,500円
*採卵から移植までの診療費 (再診料 ・ 検査費 ・ 薬剤費など)も、診察のつど必要になります。
金額は同一でも治療の「質」は…?
金額は全国一律になりましたが、保険適用によって治療の「質」も一定になるという説は、実は正しくありません。
たとえば、将棋では、持ち駒はみんな同じですが、やり方によって勝つ人と負ける人がでます。駒の数がいっしょでも、使う人の技量が違えば、結果も変わってきます。
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