増え続ける感染者…気をつけたい性感染症「梅毒」を解説!母子感染や流産・死産の可能性もあるからこそ【妊娠前からできること】 | 不妊治療・妊活のクリニック探し・情報収集ならあかほし(赤ちゃんが欲しい)
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不妊治療・妊活のクリニック探し・情報収集ならあかほし 基礎知識 増え続ける感染者…気をつけたい性感染症「梅毒」を解説!母子感染や流産・死産の可能性もあるからこそ【妊娠前からできること】

増え続ける感染者…気をつけたい性感染症「梅毒」を解説!母子感染や流産・死産の可能性もあるからこそ【妊娠前からできること】

2023/12/30 公開

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近年、患者数(報告数)が増えているという性感染症「梅毒」。

国立感染症研究所の感染症発生動向調査週報2023年 第50週(12月11日〜 12月17日)速報データによると、この1週間の梅毒の患者報告数は全国207例、現在の今年の累積報告数は14,401例。昨年2022年は1999年に現在の調査方法で統計を取り始めて以来、初めて10,000例を上回ったと報告されていた。

なぜ、増加し続けているのか、どんな性感染症なのか、症状は?妊娠をめざす場合に気をつけたいことなどまとめました。

監修・執筆
森女性クリニック
森久仁子 院長

産婦人科専門医、医学博士。大阪医科大学を卒業後、同大学産婦人科学講座に入局、同大学産婦人科学講座助教、和歌山労災病院をへて、平成25年和歌山市に森女性クリニックを開院。産婦人科としての枠組みだけではなく、女性医療の充実を目指すべく診療を行っている。

梅毒とはどんな性感染症?男女ともにかかる?

梅毒は感染症法の5類感染症であり、梅毒トレポネーマと呼ばれる細菌に感染することにより引き起こされる、男女ともに感染する性感染症です

梅毒トレポネーマは直径0.1~0.2㎛、長さ6~20㎛のらせん状の菌で、粘膜や皮膚の小さい傷から感染します。その後速やかに全身に散布され、あらゆる臓器に炎症をおこし、ほかの病気と紛らわしい様々な症状を引き起こすため、「偽装の達人」と呼ばれています。

梅毒が近年、急増しているというニュースを見るけれど、実際は?

厚生労働省のデータによると、2011年頃から梅毒の報告数が増加し、2021年以降に特に大きく増加しています。2016年には2011年の約5倍、2022年には2016年の約2倍に増加しました。

当院でも2022年には2020年の約5倍に増加していますが、メディアの発信により、検査受診される方が増えたことも一因と考えられます。

梅毒の原因は?トイレでうつるはホント?

ノーマルセックス、オーラルセックス、アナルセックス、キスで感染します。

梅毒トレポネーマは罹患者の精液、膣分泌物、血液、浸出液に含まれます。梅毒トレポネーマが、口腔・膣・亀頭表面・直腸などの粘膜にある小さな傷を通って、体内に入って感染します。

性感染症診断治療ガイドライン(2020年)によると、男性の感染経路は99%が性的接触で、そのうち65%が異性間、19%が同性間です。女性の感染経路も99%が性的接触で、そのうち90%が異性間、1%が同性間です。

梅毒トレポネーマは熱や乾燥に弱いため、一度粘膜や体液から離れると、生存しにくい性質を持ちます。そのため、トイレの便座に座るなどの、日常生活でうつる可能性は低いようです。

関連リンク:ドクターに聞いてみた!生理中のセックスって大丈夫なの?

梅毒の症状について

●梅毒感染から約1ヶ月(第1期梅毒)

感染から約1ヶ月たった時期を第1期梅毒とよびます。性器・肛門・口に痛みのない「初期硬結(しょきこうけつ)」という硬いしこりができ、その後同部位に「硬性下疳(こうせいげかん)」という潰瘍ができ、自然と消えます。

男性では亀頭と陰茎の間の部分(冠状溝)や包皮・亀頭部、女性では膣内・大小陰唇に好発します。また、鼠径部のリンパ節が腫れることもあります。

●梅毒感染から約1~3ヶ月(第2期梅毒)

第2期梅毒は感染から約1~3ヶ月後以降の時期。梅毒トレポネーマが血液を介して全身に運ばれます。

発熱・倦怠感・頭痛・のどの痛み、リンパ腺の腫れ、「バラ疹」というバラのような発疹、「丘疹性梅毒(きゅしんせいばいどく)」という赤褐色の丘疹(ブツブツやプツプツがあらわれる症状)、「扁平コンジローマ」という扁平状のイボ、梅毒性脱毛、「梅毒性粘膜疹」という口腔内の紅斑や腫れなどが出現します。症状は出たり消えたりを繰り返します。

●梅毒感染から約3年後(第3、4期梅毒)

第3、4期梅毒は感染から約3年後の時期です。あらゆる臓器に硬いしこりやゴムのようなしこりができ、周りの細胞を破壊します。心臓血管系や中枢神経系が侵され、大動脈瘤破裂・神経障害・心不全がおきることがあります。

梅毒は未治療でも時間の経過とともに症状が消えるため、自然によくなったようにみえます。しかし症状が消えても密かに進行し、ふたたび症状が出るころには全身に影響がでるため、後遺症が残る場合もあります。

梅毒はどんな検査をするの?

TPHA法・STS法という2種類の血液検査を組み合わせて調べます。

およその金額は4,000~6,000円で、保険診療の場合はその3割を自己負担します。症状がない方は自費診療で、症状がある方は保険診療で検査できることが多いですが、保険診療になるかどうかは医療機関によりさまざまです。受診を検討している医療機関に、事前に問い合わせましょう。

保健所でも梅毒の血液検査を無料・匿名で受けられますが、日時が限られている場合がありますので、近くの保健所に実施状況を確認しましょう。

梅毒の治療について

2~12週間程度薬を服用します。注射の治療の場合もあります。

第1期梅毒は2~4週間、第2期梅毒は4~8週間、第3期梅毒は8~12週間薬を服用し、症状がなくなって、STS値が治療前の1/4~1/2(測定法により異なる)に低下していれば治癒と判断し、内服終了となります。

そのあとも再び値が上がってこないかどうか、1年程度定期的に血液検査をうけるほうが好ましいです。

梅毒になってしまった場合、その後の妊娠・出産にどんな影響が考えられる?

治癒していれば、その後の妊娠・出産に影響はありません。

また、治癒していれば性行為をしても問題はありません。治癒は血液検査で判断するので、主治医に性行為をしてもいいか、確認するようにしましょう。症状がなくなっても、梅毒トレポネーマが生き残っていることがあるので、治癒していると自己判断しないことが大事です。

妊娠後に梅毒がわかった場合、赤ちゃんにはどんな影響が考えられる?

梅毒が胎盤を通して胎児に感染すると、流産や死産、低出生体重、先天異常を引き起こす危険があります。

胎盤を通して感染する梅毒の早期先天梅毒では、生まれたときは症状がないことが多いですが、生後数ヶ月以内に赤ちゃんに水疱性発疹などの皮膚症状・全身性リンパ節腫脹・肝脾腫・骨軟骨炎・鼻閉がおきます。

後期先天梅毒では、学童期以降にHutchinson(ハッチンソン)徴候(実質性角膜炎・内耳性難聴・Hutchinson歯)がでます。

関連リンク:自覚症状がない場合も!妊娠に影響する性感染症を知っておこう

梅毒の予防のためにできること

梅毒感染を避けるためにできることとして、なによりも、不特定多数の相手との性行為しないことが挙げられます。また、性行為の際にコンドームを装着すること。ですが、コンドームが覆わない部分から感染する可能性があるので、残念ながら100%の防止策にはなりません。

妊娠を考えているカップルの場合は、パートナーと一緒に血液検査を受けて、お互いに感染していないか確認するようにしましょう。

*参考
厚生労働省 梅毒報告数の推移
国立感染症研究所 日本の梅毒症例の動向について(2023年第2四半期 : 2023年7月5日現在)
国立感染症研究所 感染症発生動向調査週報2023年 第50週(12月11日〜 12月17日)
日本性感染症学会「性感染症 診断・治療 ガイドライン 2020」

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監修・執筆
監修・執筆

森女性クリニック院長。産婦人科専門医、医学博士
1999年 大阪医科大学を卒業後、同大学産婦人科学講座に入局、国立大阪南医療センター、枚方市民病院、岸和田徳洲会病院で勤務。その後、大阪医科大学付属病院助手、体外受精、乳房外来などを携わりながら、子宮内膜症や不妊症の研究をおこなう。2008年からは和歌山労災病院産婦人科に勤務。
2013年 和歌山市に森女性クリニックを開院。産婦人科としての枠組みだけではなく、女性医療の充実を目指すべく診療を行っている。
日本産科婦人科学会専門医、医学博士、母体保護法指定医、日本抗加齢医学会会員

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