「うん、着床していますね」
医師の言葉を聞いても、まだ信じられない気持ちのほうが大きくて、実感どころの話ではなかったのを覚えています。
実をいうと判定日の2日ほど前から、ムカムカや気持ち悪さがあったのですが、これまでも“想像妊娠”というやつなのか、判定日の前になると決まってムカムカするのがお約束だったので、まさか本当に妊娠しているなんて露ほども思わなかった。ただただびっくりの判定日でした。
こうして約2年の不妊治療を経て、私は38歳で男の子の母になりました。
「子宝スポットと言われている京都岡崎神社へ安産祈願に行きました」
「長男妊娠中、切迫早産で1ヵ月入院しました。マタニティフォトが撮れないまま入院になったので、これが我が家のマタニティフォトです」
ストイックすぎた妊活前半、徐々に肩の力を抜けるように
第1子の不妊治療を振り返ってみると、とくに前半はかなりストイックで、心がすりきれるくらい頑張っていたなと思います。
不妊治療を始めた当初は、サプリメントやらお茶やら、ちょっとでも「妊娠しやすい体づくりに効果がある」と聞けば、なんでも試してみる生活。
サプリやお茶でおなかが膨れちゃうくらいの量で、荷物も自宅にひっきりなしに届いていましたね(笑)。食事にもすごく気を遣って、「これは食べたらダメ」「これは体を冷やす」と我慢することもたくさん。
「食生活がかなりストイックになった時期も…」
でもあるとき、「これを続けていたら、多分壊れてしまうな」とふと冷静になったんです。それからは、好きなものをおいしく食べる生活に切り替え、サプリも医師に相談しておすすめされたものだけに厳選しました。
“黒い気持ち”は頑張っている証拠
治療中は、期待を持たずに淡々とルーティンのように通院をしていましたが、それでもやはりどこかで「今回こそ」という気持ちはあったんだと思います。希望に蓋をして見ないようにしながらも、通院を支えてくれるモチベーションはやっぱり「授かりたい」という願い。それはきっと治療を続けている皆さんに共通するものかな、と。
ただ、願いが強いからこそ、卑屈になったり、イライラしたりすることも。そして、そんな自分がすごく嫌になることもたくさんありました。妊活雑誌やブログの不妊治療体験記を読んでも、「それはあなたが授かったから言えることでしょ」と、素直に受け取れないことも多かったですね。
「疲れたら、無理せず治療を休んでもOK」
「温泉や旅行でリフレッシュしながら」
こうしたアドバイスを読んでも「いやいや、温泉行ってる時間がもったいないやん!」「こっちは1周期たりとも無駄にできひんねん!」という黒い気持ちが湧き上がる。でも、イライラしながらもやっぱり読んじゃうし、調べちゃうし、その繰り返しなんです。
振り返ると、それはすごく素直な気持ちだったんだな、と思います。モヤモヤしたり、授かった人からのアドバイスを素直に受け入れられなかったりしたのも、一生懸命、妊活に取り組んでいたからこそ。
当時は、「私はなんて器の小さい人間だろう」と思って自己嫌悪に陥っていましたが、今思うと、「それだけ真剣に頑張ったってこと。すばらしい!」と褒めてあげたくなります。
「子宝スポットと言われている京都の市比賣神社へ。妊活で頭がいっぱいの生活だったので気晴らしになりました」
産む以外の選択肢も希望に
第1子の妊活中には、「もしかしたら妊娠は無理かもしれない」と思う瞬間もありました。そんなときに改めて気づけたのが、「私は子どもが好きなんだな」ということです。
当時は教育番組に出演させていただいていて、子どもたちと触れ合う機会がたくさんありました。それで、「もし授かれなくても、子どもと関われるようなことをしていこう」と思うように。リトミックの勉強をし、講師の資格も取得しました。
また、自分が産めなくても、育てることはできる。そう思って、養子縁組や里親制度についてもいろいろ調べました。子どもと関われるスキルを身につけたり、産む以外の選択肢についても学んだりしたことは、心のゆとりにもつながったと思います。
「ふたりでも楽しい」夫の言葉に救われた
夫の存在にも本当に助けられました。
クリニックでの精液の提出はもちろん、仕事終わりに病院の最寄り駅まで迎えに来てくれたり、通院で夜遅くなったときには「外で食べていこう」と声をかけてくれたり。そんな小さな寄り添いの連続が、気持ちを穏やかにしてくれていたんだな、と今になって実感しています。
「『移植した日に渡り蟹のパスタを食べると妊娠する』と言うジンクスを発見し、食べに行きました」
今回のインタビューで、改めて不妊治療中の夫婦のやりとりを振り返っていて、夫からのLINEにぐっときたものがありました。
私が「今回も着床しませんでした」と送ったとき、彼は「では、引き続きふたりで明るく楽しくやっていきましょう」といった内容を返してくれていたんです。
当時は、「もうちょっと寄り添った言葉が欲しい」とか思っていたんですけれど(笑)、今、見返してみると、彼はあのときもちゃんと「ふたりの今」を肯定してくれていたんだなと気づかされて、なんだかとっても嬉しくなりました。
「夫婦ふたりでがんばった妊活でした」
妊活は、いつゴールがやってくるかもわからないチャレンジ。
ときには苦しくなったり、くじけそうになったりするのも、自然なことだと思います。でも、パートナーや友人、誰かとその気持ちを共有することができたら、ふっと重荷が軽くなる。私はそんなふうに感じています。
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PROFILE●高田紗千子さん
(写真右)1981年1月20日生まれ、京都府出身。2000年、高校時代の同級生・小森麻由さんとともにお笑いコンビ「梅小鉢」を結成。数々のものまね番組で菅野美穂さんや安めぐみさんのものまねを披露し話題に。2017年にお笑いコンビ「なすなかにし」の中西茂樹さんと結婚。19年8月に長男、23年6月に次男を出産。体外受精挑戦中に、リトミックの講師資格を取得。@sachikotakada120
取材・文/浦上藍子
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