無理してでも「ととのえる」べきなの?やると決めたらストイックになってしまう私はどうすればいい?【編集部とモヤモヤを話そう!妊活お茶会レポート】
編集部:確かに「やらなきゃ」と感じてしまうと、何をやるのにもつらいですよね。
今後の治療、みなさんはご自身ではどんなふうに考えていますか?
Nさん:わたしはやっぱり体外受精に進む感じになるのかなと思っています。年齢的にも。
できるかぎりいい卵をとるために、採卵に向けていろいろと体質改善にとり組んでいた知り合いが周りにいたんです。その方は、ほんとうに色々なことにとりくまれていて、結構お金がかかっていたみたい…。
お金の面は本当に心配で、わたしの性格上、やり始めたら、希望が叶うまでやり続けてしまいそうだな~って。
編集部:でも体外受精をすることで、卵管以外の原因や妊娠に近づくための糸口がみつかるという可能性もありますよね。
Aさん:わたしの場合は、いつまでタイミング法を続ければいいのかというのが気になっていることです。
編集部:タイミング法をいつまで続けるかについて、平山先生の講座でも出てくる話題ですね!
では、ここから平山先生のミニ講座にうつりたいと思います。
平山先生のミニ講座/妊活を始めようと思っているなら
妊活中はさまざまなシーンにおいてストレスを感じやすくなります。
今回は、NさんとAさんの体験をもとに、これから通院して不妊治療をはじめようと考えている方に向けて、治療中に感じやすいストレスや、やるせなさなどを感じた場合にどう対応したらいいかを、予習的に東京リプロダクティブカウンセリングセンター代表・平山史朗先生に教えてもらいました。
平山史朗先生にミニ講義
「先生のアドバイスで前向きになれました!」と参加のみなさまから毎回好評です
ストレスそのものが不妊の原因にはならない!?
平山先生:おしゃべり会でストレスのはなしが出てきたので、先にお話ししますね。
現在では、ストレスが不妊の直接的な原因にはならないと考えられています。そもそも不妊治療中のストレスはなくせるものではないので、なくさなくてはならないと考えてしまうと、結局うまくいかずさらに落ち込んでしまいます。それよりもストレスとうまくつきあっていくことを考えたほうがいいでしょう。
さきほどNさんは「いいことって無理してでもやったほうがいいのか、それとも…」ということをおっしゃっていましたよね。私が気になるのは、「では、いいことってどんなこと?」ということなんです。根拠はあるのかな?ってことです。
Nさん:そうなんですね。
平山先生:根拠がある“妊娠にいいこと”というのは残念ながらそれほどないのが現状です。
それを理解したうえであれば、ご自身が「やると調子が良くなる」とか「気分がいい」ということをやるのは悪くないでしょう。でも、それを「やらないと不安…」と考えてしまうようならば、かえってストレスになってしまっているということですから、ほんとうに続けなければならないのか、考えてみましょう。
あまりストイックにしすぎないことが大切ですね。
Nさん:わかりました。自分自身がどう感じるかが基準になるということですね。
セルフ妊活を経て不妊治療を始めるなら「早め」に!
平山先生:セルフ妊活を経て不妊治療へと進んでいくことが多いかと思いますが、たまに不妊治療を考えていることを話すと、「そんなに焦らなくても…」とアドバイスしてくる人がいるかと。
Aさん:まわりにそういう意見の方もいますね。
平山先生:ただ結論からいうと、不妊治療を始めるのに「早すぎる」ということはありません。早くに医療機関へ行くことは「妊娠への近道」になります。
一度、医療機関にかかり、妊娠へのルートを知ったうえで不妊治療を選ばないという選択肢もありますが、「できるだけ自然に授かったほうがいい」という理由から医療機関へ行かないのは、結果として妊娠の機会を失ってしまう可能性も。
Nさん:妊娠へのルート、それぞれの体の特徴などによって違いますよね。
平山先生:なかなか妊娠しない原因は、究極的には、精子と卵子の問題によるところが多いとされています。
でもそれは、その人の見た目や一般的な不妊検査ではわかりません。体外受精をし、精子と卵子を体外で観察してはじめてわかることも多いです。
Nさん:えー、そうなんですね。
–{最も確実な妊娠を遠ざける要因は?}–
平山先生:あと、精子と卵子の質に影響する要因で最も確実にわかっていることは、年齢によるものです。
さきほどAさんが「タイミング法ってどのくらい続けたらいいのかがわからない」とおっしゃっていましたが、避妊をせずにタイミングをとっていると、30代前半までの女性であれば1年以内に8割以上の人が妊娠し、2年以内には9割の方が妊娠します。
そこから考えると、1年以内にタイミングをとって妊娠しない場合は、自然妊娠が難しいなんらかの原因があると考えていいかもしれません。
Aさん:1年なんですね。自己流の目安になります。
平山先生:ただ、これも年齢別にみると、高齢になるほど妊娠率は下がっていきますので、妊娠を希望し35歳を過ぎている場合は、すぐに医療機関の受診がすすめられます。
それと、さきほどAさんもおっしゃっていましたが、本来「ブライダルチェック=不妊の検査」ではありません。ふたりが結婚生活を送るうえでの身体的なチェックという意味で、性感染症や子宮頸がんがないかをみる検査になります。
今はブライダルチェックの中でも、血液検査でAMHというホルモンを測定する医療機関もありますよね。
AMHは、卵巣に残っている卵子の数を推定することができる値。ただ、赤ちゃんになりうる「質」のいい卵子が残っているかはわからないことに注意が必要です。
関連リンク:気になるAMH値。検査の結果、AMHの数値が低いと卵の質も悪い?
体を「ととのえる」というのは、不妊治療とは別と考えましょう
平山先生:さきほどNさんが「なにを何回くらいやったら(妊娠できるか)」とおっしゃっていましたよね。クリニックで聞いてみても…というお話もありましたが、その理由のひとつをお話しますね。
不妊治療施設というのは、基本的に西洋医学の考え方をとります。なので、エビデンス(根拠)がある治療を重視してすすめていきます。
ですので、体質改善のためのサプリや、体のコンディションを「ととのえる」など、西洋医学的な根拠が薄いことに対しては、先生によって対応がまちまちかもしれません。
さらに、妊娠することが、妊活・不妊治療の終わりとは限らない場合もありますよね。逆にいうと「患者さんが希望するならいつまでも治療をします」というスタンスの先生が多いので、どこまで治療するか最終的にはご自身たち次第。さきほど述べたように「ご自身」の気持ちや感覚で決めることになります。
Aさん:なるほど。病院の先生に体質改善のことについて聞いて返事が曖昧だったとしてもある意味仕方がないってことですね。
平山先生:不妊治療を医師の方針に従ってやるだけでも本当に大変なことだと思うのです。
ですから、それ以上の努力については、本当に「これをすることに意味があるか」について、自分たちにとってのメリット、デメリットを考えて判断していくことが大切になります。
Nさん:自分たちで決めるんですね。でも確かにそうですよね。
平山先生:不妊治療の考え方についてもちょっと知っておいてください。
通常の医療は、まず検査で病気の原因を突き止めて、その原因をなくすことが治療となります。一方で不妊治療は、通常の医療と異なり、原因を直接的に治療することはあまり多くありません。原因を直さなくても、いかに精子と卵子を効率よく出あわせて、妊娠させるかという考えの治療になります。
「妊娠すること」を第一に考え、先生方は一生懸命にとり組んでいます。だからこそ、さきほどの話につながったりするんですよね。
Aさん:ほかの医療とは異なるんですね。通院する前に知ることができてよかったです。
「たまたま」そうだった、と考えるようにしてみて!
平山先生:不妊治療を始めようと考えたときに、「治療をしないと妊娠できないかもしれない」という自分を受け入れることは、意外と難しいかもしれません。
これまで疑うことなく「子どもは欲しいと思えばできる」と考えていた世界が一変してしまう、「あたりまえ」のことがそうではないと気付くのですから。
でも自分に原因があったからといって自分を責めたりすることはありません。あなたが何かしたから不妊になった、ということではないのです。
不妊を経験することは確かに一種の“不運”ではあるかもしれません。でもそれを自分のせいと責めてもつらくなってしまうだけです。たまたまそうなってしまった状況の中で、これからどうするかのほうが大事なのです。
Nさん:最初に病院へ通い始めた頃は、食生活とか運動、サプリとかストイックにやっていたんですが、今日、参加してみて「もうちょっとラクに考えていいんだ」ということがわかってホッとしました。
平山先生:ストイックになることが悪いことでは決してないです。
でもストイックにやっていてもうまくいかないことって不妊治療では出てくることもあります。そういう時にご自身を責めないでくださいね。もうNさんはご自身で充分にがんばっていらっしゃるので。
Aさん:さきほどの1年以内に8割が妊娠するというデータを拝見して、自分ができることを焦らずにやっていこうかなと考えました。
まずは、検査してみようかなと思います。
編集部まとめ
今回は、ご参加いただいた方の中からおふたりの妊活トークを中心にレポートしました。
共感するポイントもあったのではないでしょうか。さらに、平山先生のアドバイスもぜひ参考にしてみてください。
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テーマは「流産を経験しました」
(まとめ:高橋 知寿)
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